読書感想文

【夏休みの宿題 ’17】『砂の文明 石の文明 泥の文明』読了。

投稿日:2017/08/15 更新日:

いま、会社のグローバル関連の長期研修に参加しています。先日の研修で、参考書が紹介されましたので、夏休みの宿題と称して、何冊か読んでみることにしました。

夏休みの宿題 ’17

以下、目次です。この記事では2冊目をご紹介します。

  1. 『「世界で戦える人材」の条件』著:渥美育子
  2. 『砂の文明 石の文明 泥の文明』著:松本健一
  3. 『日本 -その姿と心-』
  4. 『沈黙のことば』著:エドワード・T・ホール
  5. 『木を見る西洋人 森を見る東洋人』著:リチャード・E・ニスベット

『砂の文明 石の文明 泥の文明』

以降、気になった点について、本文を引用しながら、僭越ですがワタシの見解や感想も添えて書いています。

砂の文明 石の文明 泥の文明 (岩波現代文庫)

砂・石・泥は文明をカテゴライズする観点

序章にて、本書のタイトルにもなっている、砂・石・泥の文明について、概要が語られます。

 わたしは本書で、「泥」の風土で農耕を生業とすることによって「泥の文明」が生まれ、「石」の風土で牧畜を生業とすることによって「石の文明」が生まれ、そして「砂」の不毛な砂漠を隊商をくんで生活する民が「砂の文明」を生む、というカテゴリーを設定している。

『砂の文明 石の文明 泥の文明』P14

農耕民族であり、日本のような温暖湿潤な気候の土地で営みを続けてきた我々日本人は、まさに「泥の文明」に属するわけですね。

さらに、それぞれの文明が持つ“力”について、次のように説明されています。

(前略)「泥の文明」の本質が“内に蓄積する力”であり、「砂の文明」の本質が“ネットワークする力”であり、「石の文明」の本質が“外に進出する力”である。

『砂の文明 石の文明 泥の文明』P19

文化と文明

続いて、文化と文明について、一つの章をさいて説明がなされます。こういう字面が似ている2単語を並べられると、「問題と課題」みたいな感じでちょっとムズムズしますね(笑)

(前略)だから、「文明は普遍的ではあるが、それゆえに必ず滅びてゆく」ものである。それに対して文化は、その民族の生きる固有のかたちだから、それぞれの時代の文明に応じたり、あるいはもっと時代に合ったかたちに変容することが必然化される。そのため、「文化は変容しつつも滅びない」のである。

『砂の文明 石の文明 泥の文明』P40

なんとなく、文明と文化は包含関係にあり、1つの文明の中で複数の文化が興ったり消えたりするようなイメージを持っていましたが、筆者の定義によれば、両者は時間や場所などの軸の概念がまったく異なっているような感じでしょうか。

石の文明

筆者はギリシャのパルテノン神殿の写真を見たとき、大理石で造られたその様から、ヨーロッパが石の風土であると気づいたと言います。

 ヨーロッパは石の風土である、という事実に最初に気づいたのは、ギリシャのパルテノン神殿を写真で見たときのことであったろうか。パルテノン神殿が白い大理石によって造られていることは周知の事実であるが、(後略)

『砂の文明 石の文明 泥の文明』P59

こういう洞察力、獲得したいですね。

砂の文明

続く砂の文明について、その本質が「ネットワークする力」であることから、9・11以降にアメリカが行なった対テロ戦争において目的とされた“テロリストのネットワークの根絶にある”というのはそもそもおかしいと指摘しています。

 9・11以後、アメリカは対テロ戦争としてのアフガン戦争、そしてイラク戦争を遂行している。ブッシュ米大統領によると、これらの作戦に通底する目的はテロリストのネットワークの根絶にある、という。
 しかし、この言い方はおかしい。そもそも、こんにちテロリストを多く生み出しているイスラム文明というものは、「ネットワークする力」こそが本質だからだ。テロリストのみがネットワークを持っているのではないのである。

『砂の文明 石の文明 泥の文明』P87

本質を知っていないと、ふーんそうかと流してしまいそうになる出来事も本質がわかっていれば疑問を抱くことができる。

日頃から本質は何か?と自分に問うて、自分なりに答えを形成する訓練を積む必要がありそうです。

文明ごとに異なる国境線のイメージ

なんと国境線のイメージも文明ごとに異なっていると筆者は説きます。

 ところが、その国土を確定する国境線は、同じ「国境」という言葉を使っていても、その境界線のイメージは世界の各地域によってさまざまである。
(中略)
 フランスやイギリス、ドイツやスペインなどがアフリカやアメリカへ行き、テリトリーを取り合ったり、売り合ったり、合体したりした。その結果がこんにちのアフリカの国々の国境やアメリカの州境で、これらはほとんどが直線で区切られている。
(中略)
 一方、アジアの農耕諸民族は三千年まえから同じ場所で移動せず、定住を生活形態としてきた。だから境界線は、だいたい耕地の分かれ目の山や川に沿って引かれている。
(中略)
 では、移動を生活形態とし、定住はむしろ自分たち遊牧民を死に追いやる(=定住は穢れる)と考える砂漠の民にとって、国境線は何を意味するか。移動するアラブ・イスラム圏の諸部族にとって、国境線は本来、意味をもたない。
(中略)
 直線のヨーロッパ、曲線のアジアに対して、点線のアラブであるという違いが、その国境線のイメージにはあると言えるだろう。

『砂の文明 石の文明 泥の文明』P96-99

なるほど…。これは面白いですね。昔から、カナダとアメリカの国境やアメリカの州境がなぜあんなにピシッと引けるのか気になっていたのですが、これは納得です。

新幹線の通路が狭い理由

日本に関する記述で興味深い話が紹介されていました。

(前略)今から二十年あまり前、日本がまだバブルの最盛期で、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」とおだてられ、もしかしたらアメリカを追い抜いたのかもしれないと自惚れていた時期がある。(中略)この時期、欧米の経済ミッションが日本の経済や経営の仕組みについての視察に訪れたことがある。
(中略)かれらは、日本がモノ作りで世界の最先端をいっているということは、たとえば新幹線にも象徴されている、と賞讃した。その一方で、かれらが疑問におもったことがある。新幹線の通路はなぜあれほど狭いのか、と。
(中略)
 実は、この答えは、日本人が旅をするとき、西洋人に較べてきわめて小さな荷物を持つだけで済ませることができた歴史にある。


 その点、日本の旅の場合は、普通のビジネスホテルでもほとんどすべてが揃っている。新幹線はそういう旅の文化を持った人間を運ぶわけだから、設計者も新幹線の通路は人間が逆方向から二人、荷物をほとんど持たない状態で通り過ぎることができればいい、という発想になる。

『砂の文明 石の文明 泥の文明』P145-147, 153-154

JR東海の技師たちもこの疑問に答えられなかったとのことで、個人的には日本人の平均的な体型の考慮なども含まれていたのではと思いましたが、こういう明文化されていない決定に文化や文明レベルでの意識みたいなものが垣間見えるのは面白いですね。

感想

文化・文明論は興味深いテーマではありますが、よくある宗教や言語などで論じられたものはイマイチしっくりくるものがなく、今まであまり理解が進んでいませんでした。

ですので、本書のような「砂・石・泥」という観点は、あらゆる人類が最も強く影響を受ける、気候や地形などの自然に着目した本質的なものであり、納得感も高く、理解がしやすかったです。

今後、いろいろな場面で、人や会社間の考え方などの差異を明確にして説明するようなスキルが求められるのではないかと思っていますが、その際の観点の一つとして「砂・石・泥」をお借りして実践していき、同時に自分なりの本質を見抜こうとする癖をつけていきたいと思いました。

(おわり)

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桃猫家の夫です。 プロフィールは こちら。 桃猫家.net では、運営やデザイン等の総合プロデュースとクルマやテクノロジに関する記事の執筆をしています。

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